古来から東洋では、
人々を魅了する美しい石を
「玉(ぎょく)」と呼び珍重してきました。
「玉」には、、純真・慎しさ・勇気・正義・知恵の五徳が備わっているといわれ、
常に身に着けることによって
人間の体から発せられる「気」と結びつき、
邪気を吸い取ってさらに輝くとされ、
時には、自分の身を守ってくれる
神秘的な石として
魔よけやお守りとしても大切にされてきました。
なかでも、緑色をした石は「翡翠」とよばれ、
古代の人々には権力の象徴ともされていました。
翡翠という名前は、その美しい緑色が、
かわせみ(翡翠)という小鳥の羽の色に似ているところから
名付けられたとされています。
ちなみに、翡翠を英語で
”Jade ジュード”といいますが、
この語源はスペイン語で、
pietra de ijada(腰の石)
という意味だそうです。
その昔、南米のインカ帝国にスペイン人が攻め入った時、
初めてこの石を知りました。
現地の人々は、この石を温めて体にあて、
肝臓を治療するために用いていたそうです。
現代では、鉱物学的に翡翠の定義が明確になり、
石の組織から、
「軟玉」を翡翠(Jade ジュード)、
「硬玉」を本翡翠(Jadeite ジェダイド)とよび、
区別していますが、
古い時代には、
今でいうアンベチュリンやネフライトの
「軟玉」も
一般的に翡翠として
大切にされていたようです。
翡翠とよばれる石は、
緑色だけでなく、白、青、ラベンダー、
オレンジ、黒など
様々な種類があります。
軟玉の中でも最も代表的なものは、
中央アジアの和田(ホータン)で
採れる白玉です。
その混じりけのない白さと独特の
美しい有脂感により、
”ホータンユウ(和田玉)”あるいは”シンジャンユウ(新羅玉)として
古より珍重されてきました。
興味のある方は地図を広げて和田(ホータン)の場所を確認してみてください。
遠い昔、飛行機も汽車もないころ、
はるかタクラマカン砂漠のそのまた向こうの
和田(ホータン)から、
ラクダにゆられ、
ウマに乗り換え、はるばる都へ運ばれてくる玉の
それはそれは貴重だったこと・・・
今でも容易に想像ができます。
それゆえ「玉」は、
限られた、ごく一部の高貴な人々の
装飾品や趣味の芸術品として、
希少価値を高めました。
北京の紫禁城(故宮博物館)や、
台湾の中華民国故宮博物院に残る
玉の芸術品の中にも
この”ホータンユウ”を
使用したものは少なくありません。
マンダリーナの玉や翡翠は
けっして豪華な宝石ではありません。
しかし、自分だけにぴったりと寄り添い、
時には勇気をあたえてくれ、また、時には静かな心のやすらぎをもたらせてくれる・・・
そんな風に思える石こそ
本当の宝石
(たからのいし)なのかもしれません。